IGBTモジュールやIPMは、現在、産業用のモータ制御や電源、インバータ家電、電車や自動車など幅広い分野のパワーエレクトロニクス市場で使われている(1)。パワーエレクトロニクスシステム応用分野共通のパワーデバイスに対する要求は、電力損失の低減とパワー密度の向上である。そのほか大電力化、電磁ノイズの低減や広い安全動作領域の確保などのパワーデバイスに対する性能改善の要求は強く、その要求レベルは年々高くなっている。
1)シリコンIGBTチップ技術
各種の応用分野からの要求に基づき、IGBTモジュールやIPMの性能は、この20年間でデバイスの世代を進めるごとに大きく改善されてきた。 図2は、IGBTの性能指数であるFOM(Figure of Merit)の値を、第一世代を基準として各世代の性能改善状況と改善のためのキーテクノロジーを示したものである。CSTBTのデバイス構造の改善は,第5世代IGBTの性能改善に大きく寄与している(2)。
FOM改善率の向上に伴い、最新世代のIGBTでは、電力損失も大幅に低下している。 図3は、実動作時の電力損失を、1980年代初頭のデバイスであるバイポーラトランジスタを基準として各世代のIGBTの損失と比較したものである。CSTBTを採用した最新の第5世代IGBTモジュールの電力損失は、第1世代IGBTモジュールと比較して約1/3に、バイポーラモジュールと比較して約1/5に低減している。また、第6世代のIGBTについては、最新の第5世代IGBTモジュールの電力損失に対して30%の損失低減をターゲットに開発中である。
図4に、第3世代〜第5世代についてIGBTのセル構造の比較、特長を示す。第3世代のプレーナー構造から、第4世代でセル構造をトレンチとして,大幅なセルサイズのシュリンクを行った。最新の第5世代IGBTでは、CSTBTのセル構造とし、エピタキシャルウェーハを使用しない薄厚ウェーハ構造とした。さらにLPT(Light Punch Throu-gh)構造を採用することによって大幅なパワー密度の向上と電力損失の低減を実現した。
図5は最新のIGBTの構造を従来構造と比較したものである。1,700V耐圧以下のIGBTは、CSTBT構造を採用しているが、2,500V〜6,500Vの高耐圧のIGBTでは,従来と同じプレーナー構造を継続して採用し、微細化パターンの採用で性能改善を行っている。